胃の細菌ヘリコバクター・ピロリ菌が気管支喘息のリスクを下げる

ヘリコバクター・ピロリ菌は宿主の免疫システムを再教育し、菌自体を攻撃しないようにすると同時に呼吸器の細胞を攻撃しないようにします。これにより気管支喘息を発症する可能性が大幅に減ります。

胃の細菌であるヘリコバクター・ピロリは、胃潰瘍から癌に至るまで、様々な危険な病気の原因であると長年非難されてきました。ついに、この危険で非常に一般的な細菌を世界から根絶するための抜本的な対策が講じられました。

実際、ピロリ菌が戦争を宣言した後、ヨーロッパと北米では胃がんの統計が減少し始めました。しかし同時に、喘息の症例は増加しました。細菌と喘息の関連性はますます明らかになりましたが、ピロリ菌が免疫系に及ぼす具体的な影響のメカニズムを実証できた人は誰もいませんでした。

喘息の原因は、免疫系が呼吸器系の細胞を攻撃し始め、それが炎症や気道狭窄として現れることです。チューリッヒ大学（スイス）の研究者たちは、腸内細菌が免疫系に寛容さと慎重さを教える仕組みを明らかにしました。

免疫反応の強さは、2種類の免疫T細胞によって決定されます。炎症を刺激するものと、炎症を抑制するもの（T細胞制御因子）です。免疫システムの健全性は、これらのバランスによって左右されます。喘息は、「タカ派」が増えると発症し始めます。Journal of Clinical Investigationに掲載された論文によると、H. pyloriは樹状免疫細胞を再プログラム化し、免疫システムがH. pylori自身に接触しないようにします。H. pyloriは明らかに自身の利益のために行動しますが、宿主もこの恩恵を受けています。樹状細胞はT細胞のバランスをT細胞制御因子に有利な方向に変化させます。その結果、免疫システムは病的な警戒心を失い、自身への攻撃を停止します。

胃の中にピロリ菌がいるからといって必ずしもがんになるわけではありませんが、喘息からは守られることが保証されています。この細菌は、何かが邪魔をしない限り、良い働きをし、むしろ有益であると考えられています。しかし、多くの科学者は、この細菌はあまりにも気まぐれな共生菌であるため、その恩恵がもたらす害を上回ることはないと考えています。現代社会では、私たちは常に様々なストレスにさらされており、気まぐれな細菌と生涯にわたって良好な関係を維持することは、今日では不可能でしょう。喘息を治したのに、後にがんを発症するというのは、それほど良い代替案には思えません。

研究者たちはすでに、H. pylori が免疫システムを再訓練するために使用する物質を特定するための研究を進めており、これにより、条件付きで非常に有益なこの共生生物を摂取することなく、喘息から身を守ることができるようになります。

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