無重力は多くの遺伝子の活性に影響する

無重力は、実質的にすべての主要な細胞内プロセスに関与する約 200 個の遺伝子の活動に影響を与えます。

宇宙が人体に与える影響については、これまでほとんど研究されてきませんでしたが、いくつかの成果はありました。例えば、 1ヶ月で骨組織の1～2%が失われることが知られています。これは地球上で1年間に失われる量と同じです。しかし、飛行中に生体に生じる生理学的および生化学的変化については、ほとんど詳細な研究が行われていません。宇宙空間の設置には多額の費用がかかる一方で、そのような研究を人体に対して行うことが倫理的に問題となる場合もあります。そこで、無重力が人体に与える影響を研究することを決定した国際的な科学者グループは、ショウジョウバエをモデルとして選び、強力な磁場を用いて無重力状態を再現しました。

「磁気浮上」は古くから知られていました。1990年代後半、強力な磁場が動物の体に害を与えることなく無重力状態を作り出すことが発見されました。さらに、この磁場（地球の35万倍の強さ）の中にいる動物は、まるで地球近傍軌道にいるかのような行動を示しました。それ以来、この方法は実際の飛行に代わる安価で手軽な代替手段として利用されてきました。実験では、研究者たちは発育中のショウジョウバエを22日間、重力を減少させた状態と増加させた状態に保ち、その後、昆虫の遺伝子の活動がどのように変化するかを分析しました。

実験者たちはBMC Genomics誌で、無重力状態で500個の遺伝子の働きの変化を記録できたと報告しました（男女で共通しているのはわずか10%）。しかし、ここには微妙な点が1つあります。巨大な磁場は遺伝子の働きにも何らかの影響を与えるはずだからです。磁場がどの程度影響するかを確かめるため、科学者たちはハエを同じ強さの磁場の中に置きましたが、無重力状態にはさせませんでした。その結果、無重力が活動の変化の原因と考えられる遺伝子は200個以下であることが判明しました。その中には、代謝を制御する遺伝子、免疫調節に関与する遺伝子、細胞シグナル伝達に関わる遺伝子など、非常に多様な遺伝子が含まれていました。つまり、変化はすべての主要な細胞プロセスに影響を与えたのです。一方で、重力の増加が活動に影響を与えたのはわずか44個の遺伝子でした。

もちろん、これらのデータから無重力が人間にどのような影響を与えるかをすぐに結論付けることはできません。しかし、科学者によれば、影響がないとも言えません。そして、たとえどれほど微々たるものであっても、軌道上で過ごす時間（あるいは惑星間飛行中）には、無重力による分子遺伝学的影響は非常に顕著な値に達する可能性があります。ですから、宇宙探検を計画する際には、このことを考慮しておく必要があります。