神経系形成の引き金となる遺伝子が発見される

胎児の神経系は特定のシグナルなしに自ら形成されるという仮説は、未だ確認されていない。日本の研究者らは、生殖細胞から神経細胞への分化を促す遺伝子を発見した。

胚発生の過程において、三胚葉の形成という重要な段階が存在します。ほとんどの多細胞生物では、胚体のある段階で三層構造が形成され、これらの各層（外胚葉、中胚葉、内胚葉）は、一連の組織全体の前駆細胞となります。したがって、外胚葉由来の組織は将来の生物において外皮機能と感覚機能を担うことになります。つまり、胚の外胚葉層は、とりわけ神経系全体を構成します。

神経組織の形成に関する研究結果に基づき、神経組織は受動的に胚の中で形成されるという独自のモデルが構築されました。言い換えれば、他の発達の選択肢が既に尽き、様々な外皮組織を形成する必要がない場合、神経組織の番が来ます。これは、このプロセスを開始するための特定の能動的なシグナルが存在しないことを意味します。外胚葉細胞には、神経組織の発達を抑制する複数の阻害タンパク質が含まれています。他のすべての組織が形成されると、比喩的に言えば、これらの阻害因子は手綱を放し、神経組織の形成が始まります。

理化学研究所（RIKEN）発生・再生科学総合研究センターの研究者たちは、受動的な神経組織発生モデルに新たな疑問を投げかけることに成功した。笹井芳樹氏率いる研究グループは、マウス胎児神経組織前駆細胞の形質転換における遺伝子活性を解析した。その結果、ある遺伝子Zfp521の産物が、神経組織形成過程に関与する他の遺伝子を、通常はこれらの遺伝子が抑制するタンパク質が存在する場合でも活性化することを発見した。

マウス胚を研究した結果、胚におけるZfp521タンパク質の局在とその活性時期は、外胚葉から神経組織への変化が始まる場所と関連していることが明らかになりました。マウス胚に、発生初期段階でZfp521タンパク質遺伝子を欠損させた神経前駆細胞を注入した場合、胚の発達中の神経系に統合することができませんでした。その後の分子遺伝学的解析により、この遺伝子は外胚葉から神経外胚葉への変化を刺激し、そこから神経前駆細胞が得られることが示されました。日本の研究者らによる実験の詳細は、Nature誌に掲載されています。

したがって、神経組織は受動的に、あるいは「自然に」形成されるのではなく、特定の能動的な調節因子の影響下で形成され、その形成が開始されます。ヒトにおける神経組織の形成も全く同じ方法で開始されることを示すことができれば、そのメカニズムの解明は医学にとって極めて重要となる可能性があります。