ノーベル賞は新しい知識に与えられるものであり、発見に対して与えられるものではない

今年のノーベル賞は、診断、治療の分野での功績や、新薬、ウイルス、細菌などの発見ではなく、新たな知識を得たことに授与されることになりました。

この賞は、オートファジー（細胞死）のメカニズムを発見した分子生物学者、大隅良典氏（日本）に授与されました。注目すべきことに、数年前には、遺伝子研究とアポトーシスのメカニズムの分野で発見をした3人の科学者が同様の研究でノーベル賞を受賞しています。

71歳の現ノーベル賞受賞者である大隅教授は、長年にわたりオートファジーによるタンパク質の緩やかな分解について研究を続けてきました。その研究は、天皇陛下の名において授与される国際生物学賞をはじめ、数々の権威ある賞に輝いています。

大隅教授は永遠の若さの治療法を開発したわけではないが、死がどのように起こるのかを正確に説明することに成功し、今度はそれが科学者に体の老化を遅らせる新たな機会をもたらすことになるだろう。

細胞のライフサイクルにおいては、不可逆的な損傷の蓄積など、いくつかのプロセスが進行します。重度の損傷を受けた場合、異常なタンパク質を破壊するオートファジーというプロセスが開始されます。細胞の自己破壊プロセスは1960年代に既に解明されていましたが、1990年代初頭まで、科学者はこのプロセスの詳細を完全に解明することはできませんでした。この時期に、大隅教授はパン酵母を用いた実験を開始し、その結果、細胞破壊プロセスを開始するために必要な遺伝子を特定しました。その後の研究もオートファジーに関連しており、酵母を例に挙げ、ヒト細胞でも同様のプロセスが起こることを示しました。

大隅氏の発見は、細胞が自身の内容物をリサイクルする仕組みについての私たちの理解を変え、さまざまな生理学的プロセスにおけるオートファジーの重要性を明らかにしました。

人体にとって、このプロセスは非常に重要です。オートファジーは胚発生の初期から働き始め、その後細胞ブロックに燃料とタンパク質を供給し、体が空腹やストレスに適応するのに役立ちます。また、ウイルスや細菌に感染した場合、オートファジーは感染細胞を排除するシグナルを送ります。さらに、このプロセスは、ある時点で体内で始まる老化プロセスを抑制するためにも非常に重要です。

多くの科学者によると、体内のオートファジーのプロセスが阻害されると老化が始まります。また、オートファジーの失敗により神経系の疾患や癌が誘発され、パーキンソン病、糖尿病、その他の加齢に伴う疾患の発症を引き起こし、遺伝子の変異により遺伝性疾患が発生することもあります。

現在、さまざまな科学者が、必要に応じてオートファジーのプロセスを増強または回復させる新薬の開発に取り組んでいますが、これは大隅教授の長年の研究なしには実現できません。