心臓発作と脳卒中のリスクは、10年以上肥満の状態にある若者で高い。

内分泌学会年次総会ENDO 2024で発表された新たな研究によると、10年間過体重または肥満の状態が続く65歳未満の男性と50歳未満の女性は、心臓発作や脳卒中のリスクが高まるという。

査読付き学術誌にはまだ掲載されていないこの研究で、研究者らは看護師健康研究（Nurses' Health Study）と医療専門家追跡調査（Health Professionals Follow-Up Study）のデータを使用した。彼らは、BMI（Body mass index）が25を超える女性109,259人と男性27,239人の健康情報を分析し、2000年から2020年までの心臓発作と脳卒中の発症状況を調査した。研究期間中に記録された心血管イベントは12,048件だった。

10年以上肥満状態が続いていた50歳未満の女性と65歳未満の男性において、研究者らは次のことを発見した。

• 心臓発作と脳卒中のリスクは25～60％増加します。
• 50歳以上の女性や65歳以上の男性ではリスクの増加は観察されませんでした。

これらのデータに基づいて、研究者らは、肥満の治療を早く始めるほど、心臓血管の健康に良いと結論付けた。

「過剰体重は長期間続くと有害です」と、ブリガム・アンド・ウィメンズ病院内分泌科品質管理部長であり、ボストンのハーバード大学医学部医学科助教授でもある、本研究の筆頭著者アンドリュー・ターチン博士は述べています。「肥満の早期治療を通して過剰体重を予防することで、合併症を予防し、患者の転帰を改善することができます。これらの研究結果は、医療従事者にとって、早期介入が肥満関連合併症の予防の鍵となることを示しています。過体重や肥満の人々の減量を支援する選択肢が増えた今、医療従事者はこれらの方法を患者に迅速に提供すべきです。」

肥満と健康全般の関係

ニューヨーク市のニューヨーク大学ランゴーン・ヘルスの心臓専門医、ショーン・ヘフロン博士は、心臓の健康と肥満の関係を研究している。

「これは私が現在研究している非常に重要なテーマです」と、この研究には関与していないヘフロン氏は述べた。「研究全体にアクセスできないため、明確な結論を導き出すことは困難です。しかし、肥満の全体的な負担が少ない場合、人々は一般的に健康状態が良く、他の疾患を患うことなく老年期まで生きる可能性があるかもしれません。」

2023年に発表されたレビュー記事で、ヘフロン氏とその同僚は、肥満の程度と期間が健康にどのような異なる影響を与えるかを説明した。

彼は、肥満の状況と肥満が及ぼす影響について詳細に説明した。

• 高血圧 - 肥満の程度は期間よりも大きな影響を及ぼします。
• 2 型糖尿病 - 肥満の程度よりも肥満期間の方が大きな影響を及ぼします。
• 脂質異常症 – 肥満の程度は期間よりも大きな影響を及ぼします。
• 心血管疾患および全死亡率、動脈硬化性心血管疾患 (ASCVD) および心筋症 – 期間と程度の両方が重要です。

「この新たな研究では、肥満が様々な年齢層にどのような影響を与えるかを調べました」と、カリフォルニア州プロビデンス・セントジョンズ・ヘルスセンターの心臓専門医、ミシェル・ワインバーグ博士は述べています。ワインバーグ博士はこの研究には関与していません。「中年層のリスクが最も高かったのは中年層です。若い世代は肥満期間が短いため、疾病負担が低かったのです。高齢層では、太り過ぎによる健康への保護効果が見られました。中年層は、高いBMIが健康に悪影響を及ぼす可能性があることを示唆しています。」

老年期の肥満

新たな研究によると、高齢者は若い人よりも肥満に関連する心臓発作や脳卒中のリスクが低いことがわかった。

この肥満パラドックスには、太りすぎまたは肥満の人は心臓病を発症するリスクが高い一方で、心臓病を発症すると、BMI が高い人の方が平均体重の人よりも死亡する可能性が低いという直感に反する発見が含まれています。

さまざまな説明が提案されているが、その中には、特に重篤な慢性疾患を持つ人は体重が減少することが多いため、心臓疾患を発症すると、ある程度の余分な体重が何らかの形でさらなる健康問題や死亡を予防する可能性がある、という説もある。

「肥満が心血管疾患の危険因子であることは以前から知られていたため、今回の研究結果は驚くべきものではない」と、カリフォルニア州メモリアルケア・サドルバック医療センターの構造的心臓プログラムの医療ディレクターで介入心臓専門医のチェン・ハン・チェン博士は述べた。

太りすぎは高齢者にとって保護効果があるようです。

「この研究は、高齢になっても太りすぎであることが特定の病気の予防に繋がる可能性があることを示唆する他の研究結果と一致しています」と、この研究には関与していないチェン氏は述べた。「リスクは加齢とともに低下することは周知の事実です。BMIが高い高齢者は心血管疾患の予後が良好である傾向があります。つまり、太りすぎは彼らの強健さを反映しているのかもしれません。彼らは虚弱で病気なわけではありません。太りすぎの高齢者がなぜ強健で健康であるのか、正確な理由は分かっていません。」

「しかし、この研究は、若いうちから心臓に良いライフスタイルを身につける必要性を浮き彫りにしています。私は患者さんに、アメリカ心臓協会が提唱する『人生における8つの必須事項』について伝えています。これは心臓の健康を改善するためのロードマップです。そのポイントの一つは、健康的な体重を維持し、健康的な食習慣を身につけることです」とチェン氏は付け加えた。