抗シワクリームの成分の作用メカニズムが解明された

カリフォルニア大学デービス校と北京大学の科学者チームは、ケミカルピーリングやシワ改善クリームの主要成分であるアルファヒドロキシ酸（AHA）の作用メカニズムを解明しました。AHAの作用機序を理解することは、より効果的な化粧品、皮膚疾患治療薬、鎮痛剤の開発に役立つでしょう。

アメリカと中国の科学者による研究結果は「The Journal of Biological Chemistry」誌に掲載された。

アルファヒドロキシ酸は、サトウキビ、ヨーグルト、リンゴ、柑橘類などの天然由来の弱酸の一種です。化粧品業界では、肌の見た目と質感を改善する効果があることでよく知られています。しかし、この研究が行われるまで、これらの物質がどのようにして皮膚細胞の最上層、つまり死んだ角質細胞を剥離させ、目に見えるアンチエイジング効果をもたらす若い細胞層を露出させるのかについては、ほとんど知られていませんでした。

研究者たちは、ケラチノサイト膜に存在するイオンチャネルの一つ、いわゆる一過性受容体電位バニロイド3（TRPV3）に注目しました。他の研究で示されているように、このチャネルは皮膚の正常な生理機能と温度感受性において重要な役割を果たしています。

AHAに曝露された細胞の膜電流を記録する一連の実験を通して、研究者らは、グリコール酸（最も小さく、最も生体利用性の高いアルファヒドロキシ酸）がケラチノサイトに取り込まれ、遊離プロトンを生成して細胞内に酸性環境を作り出す仕組みを記述するモデルを開発しました。高い酸性度はTRPV3イオンチャネルを活性化し、それが開き、カルシウムイオンが自由に細胞内に侵入できるようになります。そして、開いたTRPV3チャネルからプロトンも細胞内に侵入し始めるため、このプロセスは自己持続的になります。過剰なカルシウムイオンが蓄積した結果、細胞は死滅し、その後剥離します。

TRPV3イオンチャネルは皮膚だけでなく、神経系の他の多くの部位にも存在します。既に述べたように、TRPV3は環境の酸性度だけでなく温度にも敏感です。本研究の著者らは、TRPV3が疼痛制御を含む多くの重要な生理機能を担っている可能性を示唆しています。

最近、中国の科学者たちは、TRPV3の変異がオルムステッド症候群の原因であると結論付けました。オルムステッド症候群は、激しい痒みと掌蹠角化症（大量の角質沈着を伴う）を特徴とする稀な遺伝性疾患です。これらの知見を踏まえると、TRPV3は化粧品だけでなく、鎮痛剤や皮膚疾患の治療薬のターゲットとなる可能性があります。